「社内でBtoCマーケティングの担当者になったけど、どうしていいかわからない」「自社商品にはどんなマーケティング戦略が適しているのか、まったく検討がつかない」といった悩みはありませんか?マーケティングは、BtoCビジネスにおいて長年研究されてきた分野であり、多くの知見やノウハウがありながら、しっかりと学ぶ機会が少ないことも事実です。
本記事では、そんなBtoCビジネスにおけるマーケティング戦略の基本を解説していきます。BtoCマーケティングの特徴やプロセス、有名なフレームワーク、注意点まで紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
BtoCマーケティングとは
BtoCマーケティングとは、「Business to Customer(ビジネス トゥ カスタマー)の略で、企業が一般消費者向けに商品・サービスを販売するための一連の活動です。まずはBtoCマーケティングの特徴や、戦略立案のプロセスを見ていきましょう。
マーケティングの外注を検討している方は以下の記事を参考にしてください↓↓
BtoCマーケティングの特徴
BtoCマーケティングには以下のような特徴があります。
ターゲット市場が大きい
取り扱う商品にもよりますが、基本的には生活者全般を相手にビジネスを行うため、幅広い層がターゲットとなります。BotBビジネスと比べると圧倒的にターゲット市場が大きいということは、容易に想像がつくのではないでしょうか。
膨大な数の業態
企業が一般消費者向けに行うビジネスのため、膨大な数の業態や顧客とのタッチポイントがあります。コンビニやデパートなどの小売業、飲食店やアミューズメントパーク、美容室、旅行や保険といったサービス業、飲料や自動車、食品などのメーカーやインフラ業界も含まれます。
基本的には完成品と販売する
一般消費者がターゲットとなるため、扱う商品は「完成品」が基本です。パーツや材料といった商品もありますが、一般向けにパッケージされ、扱いやすいように加工されています。
価格は抑えめ
日常生活で使用するため、個人が購入しやすい価格帯に抑えられており、取り扱う商品の平均単価は低めです。
消費者が判断
「消費者がひとりで判断して購入を決定する」というのが、BtoCマーケティングの基本的な考えです。家族や友人に相談したり、行動購入といったかたちもありますが、BtoBに比べると購入プロセスはシンプルです。
ブランドスイッチが起きやすい
BtoCビジネスの現場では、同じ商品を再度購入する際に、競合他社を選ぶ「ブランドスイッチ」が頻繁に起こります。そのため、商品寿命(Life Time Value)が短いことも特徴でしょう。
売上につながるのが早い
売上につながるのが早いことも特徴のひとつです。住宅や自動車といった高額商品を除いては、個人が購入を決定する時間はあまり長くありません。
感情への訴えが効果的
BtoCマーケティングは、顧客の感情に訴えるような仕掛けが効果的です。一般消費者は、満足感や幸福感、悩みや問題の解決、所有欲といった個人的な感情によって購入を決定します。
価格の変化に厳しく競争が激しい
個人で判断するためちょっとした価格の変化やお得感、コストパフォーマンスによって購買意欲が左右されます。そのため、市場によっては激しい競争が起こるのも特徴です。
BtoB向けのマーケティングについては以下の記事を参考にしてください↓↓
BtoCマーケティングの戦略とプロセス
マーケティングは「戦略」と「プロセス」が大切な要素です。新しいビジネスを展開していく上では、少なからずマーケティングを行い、成功させるための戦略とサイクルをまとめる必要があります。
ここでは、マーケティング戦略に必要な基本的なプロセスを3つに分けて解説します。
市場分析と細分化
参入する業界内や企業内外の市場、環境などを観察するところがスタートです。自社の強みや苦手な部分と、競合他社を含めた市場全体を比較し、どのように差別化を図るべきか、方向性を検討します。
関連項目全体の情報収集と分析が済んだら、自社が参入するべき市場を見つけるために、細かく切り分けを行っていきます。一般的に「すべてのニーズに対応できる商品づくりは難しい」と考えられているため、自社が強みを発揮できる市場やニーズを注意深く検討することが大切です。
市場にある不特定なニーズや多数の顧客をさまざまな切り口で分類することを「セグメンテーション」と呼びます。地域や性別、年齢、職業、趣味・趣向、価値観などで分類していくのが基本です。
ターゲットを絞る
細分化した各グループから、参入する市場を選ぶプロセスを「ターゲティング」と呼びます。自社の強みや作りたい商品・サービスの特徴などを考慮し、優位となれる市場を見極める作業です。
ポイントは自社商品・サービスを購入してくれる人物をより明確にイメージすることです。提供する相手が明確であるほど、より適切な商品づくりやマーケティング戦略の構築が可能となります。
とくに自社商品を必ず買ってくれそうな顧客イメージを「ペルソナ」と呼びます。「20代女性」だけでなく、住んでいる地域や職業、年収、ライフスタイル、など細部までイメージすることが大切です。
自社商品の立ち位置を決める(ポジションニング)
「ポジショニング」とは、ターゲティングで見極めた市場において、自社がどのように振る舞うべきか、商品・サービスの差別化や顧客とどのようにコミュニケーションを行うかを決めるプロセスです。
自社が立ち回りやすい市場で、競合他社に負けない魅力的な商品を適切な場所でアピールすることで、顧客に特別な価値を感じてもらうことが狙いです。
BtoCマーケティングに効果的な施策例
ここでは、BtoCマーケティングに効果的な施策や手法を紹介します。マーケティング戦略を策定する際にも役立ちますので、ぜひ参考にしてください。
自社コンテンツ(オウンドメディアなど)
自社コンテンツづくりは「コンテンツマーケティング」とも呼ばれ、企業がターゲットに向けて価値のある情報を発信することで、ブランディングを強化し、最終的な売上アップにつながる施策です。
検索サイトで優位に立ち回れる「SEO」や、ホワイトペーパー、人気の動画コンテンツなど、その種類はさまざまです。
SNSマーケティング
SNSを活用したマーケティング手法も人気で、近年では多くの企業が導入しています。顧客との距離の近さや拡散力により、多くの見込み客に商品やサービスの魅力を伝えたり、購入までの導線を構築するのに最適です。
一方、情報の拡散力が強すぎるため、誤解を招くコンテンツや不適切な投稿とみなされると、あっという間にブランド力を落としてしまう危険性もあります。
イベント企画
企業が主催する企画を通じ、商品やサービスの魅力をアピールする場を顧客に体験してもらう手法です。見込み客を増やしたり、商談機会を作ったりと、さまざまな効果が期待できますが、事前の準備に手間がかかったり、かけたコストのわりに当日の来場者がほとんどいなかったりと、相応のリスクもあります。
イベントと聞くと、オフラインで開催するものをイメージしがちですが、昨今ではオンライン配信形式も頻繁に企画されています。
広告出稿
その名の通り、WebメディアやSNS、アプリといった各種媒体に自社商品やサービスに関する広告を出すことです。本記事で紹介するマーケティング手法のなかでは最も古い手法であり、さまざまな媒体や打ち出し方があります。
カスタマーレビュー
商品やサービスを実際に体験してもらい、感想や意見、評価といったフィードバックを受け取ることを「カスタマーレビュー」といいます。商品開発や改善などに役立つ有益な情報を得られることも多く、マーケティング手法として取り入れている企業も多いです。
また、カスタマーレビューはときに「口コミ」としても効果を発揮します。近所同士の情報交換や大手ECサイトにあるユーザーからのコメントなどは、口コミとして広がり、商品の評価を大きく左右することもよく見られる事例です。
メールマガジンなど
メールを使ったコミュニケーションも、定番のマーケティング手法のひとつです。メール配信を通じて顧客に直接アプローチし、集客や売上につなげます。さまざまなメディアが発達した今日でも、コンバージョン率が高い方法として、重要視する企業も多いです。
一昔前は、登録したユーザー全体に同じ情報を送信するだけのシンプルな手法でしたが、近年では、顧客の属性などを細かく管理し、必要な人に必要なタイミングで必要なぶんだけ、自動的に情報を送るとったことが可能となっており、一人ひとりにマッチした最適な情報を届けることで、売上アップや顧客の育成に役立てられています。
こういったマーケティング活動の自動化を「マーケティングオートメーション(MA)」と呼び、さまざまな仕組みやツールが登場しています。
マス広告や直接営業
新聞やテレビ、有名雑誌などへ出稿する「マス広告」や、既存顧客や見込み客に直接営業する昔ながらの手法もあります。規模が大きく手間のかかる業務も多いですが、過去の経験や知識から得られたノウハウが揃っており、まだまだ重視してる企業も多いマーケティング手法です。
代表的なマーケティングフレームワーク
情報収集や分析、戦略立案といったマーケティング施策を実施する上で必ず行う活動は、「マーケティングフレームワーク」としてテンプレート化されているものも多く存在します。
ここでは、マーケティング戦略を練る際に役立つフレームワークをいくつか見ていきましょう。ビジネスに役立つ基本的な要素がまとめられているので、たいへん参考になるものばかりです。
マーケティングファネル
一般消費者が商品を認知し購入に至るまでの流れを図解にまとめたものが「マーケティングファネル」です。
商品を認知してから興味・関心を持ち、具体的に比較検討を行い、実際に購入に進む流れのなかで、見込み客の数はどんどん減っていきます。その様子が「漏斗(ろうと)」のように描かれていることから「ファネル」と名付けられました。
3C分析
ポジショニング策定の際に役立つフレームワークです。「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」という3つの視点から市場を分析し、自社の立ち位置を検討します。
非常にシンプルで使いやすい一方、綿密で正確な情報収集と客観的に分析・評価する力が求められる手法です。
4P分析
4P分析とは、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4つから頭文字と取ったもので、自社の商品やサービスを客観的に評価するのに適したフレームワークです。
各要素がシンプルなため、3C分析と同様に、正確な情報収集と客観的に分析・評価する力が求められます。
PEST分析
「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の頭文字を取った用語で、自社が置かれている環境を外部要因から分析するのに適したフレームワークです。
こちらもシンプルなため、曖昧な分析になりがちなうえ、自社以外の外的要因に左右される要素で構成されているため、変化が大きいことにも注意しなければなりません。周辺環境をつねに観察し、先を見通す力も必要です。
SWOT分析
企業やプロジェクトの現状を客観的に把握するためのフレームワークで、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素の頭文字を取ったものです。
さらに横軸に「環境」、縦軸に「要因」という関係値を設け、それぞれの要素がどのような状態かを把握します。例えば、内部環境がマイナス要因なら、それは「弱み」であり、外部環境がマイナス要因なら、自社にとって「脅威」と判断するといった具合です。
BtoCマーケティング実践時のポイント
どんなに優れたマーケティング手法があったとしても、それらを実践するうえでは、共通の注意点や大切にしたいポイントがあります。今回はつぎの4つに絞って紹介します。
- 適切なチャネルを選定する
- トラブル発生時のリスクを考慮する
- 時間やコストを計算に入れる
- 消費者の感情を理解する
順番に見ていきましょう。
適切なチャネルを選定する
ひとつの商品やサービスを作り、売上を生み出すまでにはさまざまなツールや手法、経路をたどります。それらの要素を策定していくのがマーケティングの役割であり、各要素がチャネルです。
適切なチャネルを選定することができれば、集客と売上を加速させることが可能であり、逆に大きくズレてしまえば売上には結びつきません。情報収集や分析、取捨選択を行い、最適なプランを見出していきましょう。
トラブル発生時のリスクを考慮する
完璧なマーケティング戦略を行ったとしても、ビジネスにはトラブルが付きものです。トラブル発生時のリスクを考慮した「リスクヘッジ」をつねに念頭におきながら、戦略を策定していきましょう。
リスクは予測しにくいものから、予測しやすいものまであります。予測しやすいリスクから洗い出し、防止策を立てることが大切です。
時間やコストを計算に入れる
ビジネスを展開していく際には、それにかかる「時間」や「費用」を計算に入れることが鉄則です。
投資した費用に対してどの程度利益が出たのかを表す指標を「ROI(Return On Investment)」、顧客から将来的に得られる利益を定量化した指標を「LTV(ライフタイムバリュー)」といい、これらの指標を用いて測定した結果を「費用対効果」といいます。
消費者の感情を理解する
BtoCビジネスにおいて重要なのが「消費者の感情」から生まれる行動です。これらは「消費者心理学」や「消費者行動論」と呼ばれ、マーケティング戦略にも取り入れられています。
消費者は、商品が持つ機能価値や社会的価値、認識的価値に加え、感情的価値の4つで評価するとされており、どの側面からアプローチするかによって、マーケティング戦略も変わってきます。
BtoCマーケティングとは「消費者の解決策を提示すること」
BtoCマーケティング戦略と方法論、注意点について解説しました。一般消費者に自社商品を購入してもらうためには、マーケティングが必須です。自社商品やサービスに適した消費者にいかに多く接点を構築し、購買意欲を高められるかが、成功を左右する大きな要因です。
そのためには、つねに自社ブランドのイメージを高め、より適切に価値を伝えることが大切です。消費者の課題や悩み、幸福感といった感情を理解し、解決策を提示することを心がけましょう。