企業ブランディングは、マーケティングを行ううえで、企業の成長や市場における優位性確保のために欠かせない戦略です。ただ、ブランディングは短期間で成功するケースは少なく、計画的な戦略立案が必要となります。そこで、本記事ではブランディングの概要やメリットをはじめ、戦略の立て方、成功事例まで詳しく解説していきます。
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企業ブランディングとは
企業ブランディングとは、取引先・株主・従業員・消費者などのステークホルダーに自社の理念やイメージを共有し、企業イメージを戦略的に高めることです。企業ブランドは、以下のように多くの要素から構成されています。
- 企業理念
- 行動指針
- 企業の伝統・文化
- 価値観
- 事業内容
- 強み
- 従業員
- 社内外におけるコミュニケーション
など
企業ブランドは、商品・サービスブランドに比べてブランドの構成要素が多いため、様々な方法でのブランディングが可能です。例えば、企業理念を発信し共感してもらう方法もあれば、店舗における接客によって企業全体のイメージを高めるという方法もあります。
このように、自社に最適な方法で企業イメージを発信し、他社との差別化を図るのが企業ブランディングです。
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企業がブランディング行う目的とメリット
企業ブランディングを行う目的やメリットについて解説します。
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企業や商品の価値を高める
企業ブランディングを行うことで企業の認知度が向上するため、信頼の獲得につながります。例えば、名前も知らない企業と有名な企業から同じような商品が販売されている場合、多くの人は有名な企業から販売されているものを選ぶでしょう。
このように、企業ブランディングによって理念やイメージを認知してもらうことで、「あの企業なら大丈夫」と信頼を獲得し、企業や商品の価値を高められます。
また、理念やイメージを社内にも発信する企業ブランディングは、従業員からの信用も獲得できるため、企業価値の向上も期待できます。
利益率を向上させる
企業ブランディングに成功すると価格競争から脱却できるだけでなく、企業への信頼によって競合他社より高単価であっても、消費者から選んでもらえる可能性が高まります。
例えば、ブランド性のない3,000円の化粧品より、知っているブランドから販売されている5,000円の化粧品のほうが魅力を感じるでしょう。
さらに、企業ブランドが確立されれば、リピート率の向上も期待できます。このように、企業ブランディングを行うことでより高単価の商品・サービスを販売したり、リピート率の向上によって販売コストを抑えられるため、利益率の向上につながるのです。
人材確保が有利になる
企業ブランディングによって企業の認知度が向上すれば、人材確保が有利になるでしょう。自社ならではの理念やイメージを発信することで、理念やイメージに共感した人材が集まりやすく、採用におけるミスマッチを回避し、離職率の低下にもつながります。
多くの求職者が集まれば、優秀な人材を発掘できる可能性も高まります。このように、企業ブランディングは人材確保を有利にし、同時に採用コストを抑えることにもつながるでしょう。
4ステップ!企業におけるブランディング戦略の立て方
企業がブランディング戦略を立てる際は、以下4ステップで進めていきます。
ステップ1|自社の現状を把握する
まずは、自社が市場内でどのようなポジションにいるのか、現状を把握するところからはじめましょう。自社を取り巻く外部環境や自社内の内部環境について分析します。環境分析にはフレームワークを活用するとよいでしょう。
外部環境を分析する際は「PEST分析」の活用がおすすめです。PEST分析は、「Politics(政治的要因)」「Economy(経済的要因)」「Society(社会的要因)」「Technology(技術的要因)」の4つの要素を分析することで、世の中の流れや動向をつかみます。
内部環境を分析する際は「3C分析」の活用がおすすめです。3C分析は「Company(自社)」「Competitor(競合他社)」「Customer(顧客)」の3つの要素を分析し、他社と差別化を図れる点・自社の強みや弱み・顧客ニーズなどを把握します。
例えば、自社のポジションが曖昧なまま「環境に優しい」というイメージを発信したとします。しかし、すでに環境に優しいというイメージを持った競合他社が存在すれば、自社のイメージは認知が拡大されないばかりか、顧客はすでにある競合他社へと流れてしまうでしょう。
このように、自社のポジションを正しく把握できなければ、企業ブランディングに失敗する可能性があります。そのため、自社の現状把握には時間をかけながら、十分な分析を行うことが大切です。
ステップ2|ブランドコンセプトを設定する
次に、ブランドコンセプトを設定しましょう。ブランドコンセプトとは、企業の理念やイメージなどを言語化したフレーズのことです。企業や企業の未来を想像できるような内容にすると、ステークホルダーへのアピールにもなり得るでしょう。
例えば、スターバックスでは「サードプレイス」というブランドコンセプトを掲げています。「サードプレイス」には、家でも仕事場でもない第三の場所という意味が込められています。
このように、ブランドコンセプトは、株主・取引先・消費者といった外部に共感してもらうだけでなく、従業員から指示を得たり誇りを持てるようなフレーズにすることが大切です。自社の理念やイメージを分かりやすく伝えられるよう、最適なブランドコンセプトを設定しましょう。
ステップ3|ブランドの提供価値を決定する
そして、自社がどのような価値を提供するのかを決定します。ブランドの提供価値は大きく分けると以下4つに分類されるため、自社の事業や扱う商品・サービスなどから、どの価値を提供できるか検討するとよいでしょう。
- 実利価値:品質・機能性・ユーザビリティなどの実利が消費者に与える喜び
- 感性価値:デザイン・ブランドイメージなどの感性が消費者に与える喜び
- 情緒価値:実感・体験などが消費者に与える喜び
- 共鳴価値:自己実現・社会実現を通じて消費者が自尊心を満たせる喜び
提供価値は、1つもしくは複数を組み合わせて提供できます。例えば、スタイリッシュなデザインの家電製品を取り扱う企業であれば、機能性という「実利価値」と、スタイリッシュなデザインという「感性価値」を提供可能です。
また、自社が提供できる価値は何なのかという視点にくわえ、ステークホルダーに共感してもらいたい価値は何なのかという視点からも、提供価値を決定するとよいでしょう。
ステップ4|ブランドの訴求方法を検討する
最後に、どのようにブランドを訴求していくかを検討しましょう。どうすればステークホルダーにブランドイメージを届けられるか、具体的な施策を策定することが大切です。主な浸透施策としては、以下のような方法が挙げられます。
- ブランドロゴの作成
- テレビCM
- Webサイト運営
- SNSアカウント運用
複数の施策を実施することも可能ですが、発信するメッセージには一貫性を持たせることが重要です。自社にとってもっとも効果的な施策を選定し、実行に移していきましょう。
ブランディングに成功した企業事例3選
実際、企業ブランディングに成功した事例3選を紹介します。
星野リゾート
星野リゾートは、国内外で64もの宿泊施設を運営している企業です。同社は、宿泊施設を所有するのではなく、すでに存在する宿泊施設の運営をメインとしている特徴があります。
ブランドコンセプトは「ホスピタリティ・イノベーターを目指す」と述べ、これまでのホテル業界で当たり前だったお客様に合わせるサービスではなく、自分たちが思う魅力をサービス化していくことでした。
例えば、同社の運営により再生された「青森屋」では、以下のような「その土地ならでは」のサービスが提供されています。
- 青森の郷土料理を中心に提供している
- 地元出身のスタッフが全体の8割を占め、接客には方言を使っている
- ねぶた祭りを見られる
このように、ブランドコンセプトに沿った宿泊施設の運営により、「同社が運営するホテルでしか味わえない体験がある」とファンを獲得しており、企業ブランディングの成功事例といえます。
出典:星野リゾート「施設をさがす|星野リゾート【公式】」
スターバックス
スターバックスは世界的に有名なコーヒーチェーンで、「サードプレイス」というブランドコンセプトを掲げています。家でも仕事場でもない第三の場所として、リラックスできる空間を提供しているのが特徴です。
また、同社では来店した顧客が空間や接客に癒されるよう、顧客との唯一の接点となる接客にも力を入れています。こういった戦略が、リピーターの獲得や口コミによるブランドイメージの拡散につながり、企業ブランドを確立させたといえます。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、国内の自動車メーカーのでもトップ企業としての地位を確立している企業です。ステークホルダーから多くの共感を得た戦略には「カイゼン」が挙げられます。
「カイゼン」とは、生産性を落とさない人員削減や在庫リスクを低下させるなど、同社独自の手法を指します。この独自の改善方法は海外にも「KAIZEN」として広がり、自動車業界以外の分野でも活用されているほどです。
このような独自の改善方法を打ち出したことで、多くのステークホルダーから指示され、「世界のトヨタ」という企業ブランドを確立しています。
企業のブランディングまとめ
モノやサービスが溢れる現代では、企業ブランディングは企業規模にかかわらず、すべての企業に必要な戦略です。ブランディングに成功すれば企業の成長・売上アップ・市場シェア拡大などの効果を得ることができるでしょう。ただ、やみくもにブランディングを行っても成功する可能性は高いといえません。そのため、計画的なブランディング戦略を立案後、1つずつ実行に移していきましょう。