SNSや口コミサイト、動画サイトなどが普及し、誰でも気軽に情報発信できる時代です。マーケティングにおいても、プラットフォームを有効に活用する力が求められています。
そこで本記事では、「ユーザーが作る価値」をテーマに、年々注目度が高まっている「UGC」について解説します。
UGCとは
UGCとは、企業ではなく一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツの総称で、「User Generated Contents」の頭文字をとったマーケティング用語です。
代表的なものとしては「SNSに投稿された商品画像や動画」「情報サイトやECサイトのレビュー・口コミ」「個人ブログや動画サイトでの評価・評判」といったものがあります。生活者のリアルな声がUGCです。
企業広告よりも消費者に近い目線で投稿されるため、共感を生みやすく、購買意欲を高める効果も期待できます。オンライン上でのコミュニケーションも活性化され、消費者と企業、他のユーザーとの関係を深めるといった現象も見られます。
CGMとの違い
UGCは、CGM(Consumer Generated Media)と混同されがちですが、UGCは「ユーザーが生み出すコンテンツ」を指し、CGMはUGCを扱うメディアを指します。
UGCが重要視される理由
企業のマーケティング活動において、なぜUGCが重要視されるようになってきたのでしょうか。本記事では、つぎの3つの観点から解説します。
- SNSや動画サイトの影響力
- 広告疲れや嫌悪感
- 購買プロセスの変化
順番に見ていきましょう。
SNSや動画サイトの普及と影響力
ひとつ目は、「SNSや動画サイトの普及と影響力」です。SNSや動画サイトといったメディアがCGMとして機能し、UGCを瞬く間に広く拡散させる手段となっています。
企業がこれらのプラットフォームを通じてユーザーの生の声や体験を取り入れ、信頼できるブランドストーリーの構築に成功している事例も増えています。
広告疲れや嫌悪感
インターネットを見わたすと、ユーザーに最適化されたさまざまな広告を目にします。
インターネット広告がきっかけで認知や購買、ブランド力向上に繋がることもありますが、過剰な広告に飽き、大げさな表現や押し付けに嫌悪感を抱くようにもなってきています。
UGCは一般ユーザーが生み出すコンテンツであり、企業が自ら制作した広告にくらべ、リアルさや信頼性があるため、嫌悪感を抱きにくいというのが利点です。広告の代替手段として、消費者と信頼性の高いコミュニケーションを実現する重要な役割を持つようになっています。
購買プロセスの変化
UGCは、消費者の購買プロセスの変化にも影響しています。
従来は広告やマスメディアを通じて得ていた情報が、インターネットやスマホに大きくシフトし、ユーザーが自身で情報を収集しやすい状況に変化しています。その結果、製品やサービスに関する信頼性のある情報を求め、その一環として他のユーザーの経験や意見に注目するようになりました。
UGCは実際の利用者が生み出すコンテンツであるため、製品やサービスの実態がよりリアルに伝わり、購買意思決定に大きな影響を与えるまでになっています。
効果的にUGCを構築する方法
ここからは、ポジティブなUGCを構築する方法について解説します。
ユーザーが接触しやすいポイントを作る
ひとつ目は、ユーザーが自社製品やサービスと接触しやすいポイントを作ることです。SNSや自社メディアを活用し、顧客たちが手軽にコンテンツを作成できるような仕組みを整えましょう。
たとえば、キャンペーンやユーザー投稿企画は、自社ブランドとユーザーのコミュニケーションを促進しやすい施策です。ハッシュタグや共有可能なコンテンツを積極的に提供し、UGCの量と質の向上を狙ってみましょう。
インフルエンサーを巻き込む
インフルエンサーを使ったマーケティングは、とくにSNSが登場してから大きな影響力を持つようになりました。信頼性が高く、フォロワーの多いインフルエンサーたちが製品やサービスを実際に使用し、その体験をシェアすることで、一度にたくさんのユーザーにリーチできます。
インフルエンサーやそのフォロワーたちがユーザーとして参加しやすいキャンペーンやチャレンジを企画し、ポジティブなUGCの構築を狙ってみましょう。
レビューサイトを活用する
レビューサイトも有効な方法です。消費者が商品やサービスに対する意見を発信する場であり、積極的に自社の製品やサービスに関するレビューを促すことで、UGCの信頼性向上につながります。
ネガティブな口コミやレビューもありますが、フィードバックをもとに改善点を把握し、迅速な対応を行うことで、かえって信頼性向上につながるケースもあります。
体験モニターやイベントを企画する
ユーザーが直接製品やサービスを体験する機会を作ることで、質の高いUGCの生成が期待できます。イベントの感想や写真、動画などがSNSや動画サイトで拡散されることで、ブランドの知名度向上やポジティブなイメージの形成にもつながるでしょう。
獲得したUGCを活用するポイント
上手くつくり出したUGCは、どのように活用したらいいのでしょうか。ここでは、つぎの3つの観点から、獲得したUGC活用のポイントを紹介します。
- 自社SNSで発信する
- 広告やLPに掲載
- 自社ブログや動画サイトに投稿
順番に見ていきましょう。
自社SNSで発信する
自社SNSでの発信は、定番の活用方法です。ユーザーが作成したコンテンツをブランドの公式アカウントやプロフィールでシェアすることで、フォロワーに向けてブランドの魅力や製品の良さをアピールすると同時に、既存顧客のロイヤリティ向上も期待できます。
UGCが生む広告効果が最大化され、フォロワーとのコミュニケーションも強化されるというポジティブなサイクルを狙うことも可能です。
広告やLPに掲載
広告やLPへの掲載も、多くの企業が採用している手法です。広告やLPに組み込むことで、ブランドメッセージをよりリアルで説得力あるものに向上させることができます。
とくに複雑な商品やサービスの特徴を広告やLPにすべて盛り込もうとすると、煩雑になり閲覧者が混乱してしまう要因になってしまいます。ユーザーが実際に使用した口コミや感想は、「便利だった」「面白かった」といった感情に基づいたものも多いため、直感的で伝わりやすいという点が魅力です。
自社ブログや動画サイトに投稿
自社ブログや動画サイトへの投稿・掲載も有効な手段です。製品やサービスに対する生の声や体験を併記することで、オンライン上では伝わりにくい魅力や使い勝手を、より詳細に表現できます。
また、ユーザーの口コミや感想は、SEOにもポジティブに影響するといわれています。オウンドメディアを運営している担当者は、ぜひ検討してみましょう。
UGC活用時の注意点
ここでは、UGC活用時の注意点について紹介します。UGCはその特性上、一般ユーザーを巻き込んでいるともいえるものです。大きなトラブルになる前に、チェックしておきましょう。
ステルスマーケティング対策
広告であることを隠しながら商品やサービスを宣伝する「ステルスマーケティング」は、ブランド力だけでなく、自社そのものにも大きなダメージを与えてしまいます。ステルスマーケティングの意図がなくとも、一般消費者が「ステマだ」と認識してしまうと、炎上などのトラブルにつながる可能性もあるため、難しい問題です。
2023年10月1日から、ステルスマーケティングは景品表示法違反として明確にルール化されました。具体的には、広告を出している企業だけでなく、アフィリエイトを利用している一般のブロガーやウェブサイト運営者も見やすい箇所に「PR」や「広告」といった表記が必須となっています。もし違反が見つかった場合、罰則があるのはサイト運営者ではなく、広告主側です。
大きなトラブルに発展する前に、事業責任者やマーケティング担当者と一緒に確認しておきましょう。
参考元:消費者庁
著作権対策
UGCは、あくまで一般消費者たちが生成したコンテンツであるため、いくら自社商品を紹介しているものであっても、無断で使用すると相手の著作権を侵害してしまう可能性があります。また作ったコンテンツそのものに、著作権違反につながるような事柄が含まれているかもしれません。
コンテンツが著作権に違反していないかを確認し、ユーザーとコンテンツ利用に関する合意を取るなど、法的トラブルを回避するための対策を強化しましょう。
薬機法の広告規制表現対策
薬機法とは、保健衛生の向上を図ることを目的とした法律で、医薬品等の製造や販売などに関するルールが定められたものです。LPや広告もこの薬機法の対象となっており、ユーザーが生成したUGCであっても、例外ではありません。
著作権対策と同様に、UGCを活用する場合は、薬機法に抵触しないか注意しましょう。対象となる「医薬品等」には、化粧品や健康食品も含まれるため、関連する企業や商品は意外と多くあります。
ネガティブ投稿への対応
UGCはポジティブなものだけとは限りません。ユーザーの「生の声」は、ときに批判的な意見やクレームなどが投稿される可能性もじゅうぶんあります。
なかには感情的なものや、悪意を持ったもの、攻撃的な内容のものが投稿されることもあるかもしれません。担当者は目を背けたい事案かもしれませんが、ネガティブなUGCへの対応は、その後の企業やブランドの信頼性を大きく左右します。
迅速かつ誠実な姿勢を心がけることが大切です。
UGCと自社ブランド力の相乗効果を狙おう
オンラインマーケティングの現場では、UGCの効果的な活用が大きな注目を集めています。たくさんのポジティブなUGCを構築することができれば、より効率的で効果的なマーケティング施策を展開することも可能になるでしょう。
一方で、UGCは一般消費者が自発的に生成するコンテンツであるため、ブランドイメージを下げたり、トラブルにつながる可能性もあります。本記事で紹介したポイントや注意点を参考に、ぜひ自社のマーケティング戦略に取り入れてみてください。