不特定要素が多い現代のBtoBビジネスにおいて、マーケティング戦略は必要不可欠です。従来のセールス方法だけではなかなか上手く成果が上がらないという企業の話もよく耳にします。
そこで本記事では、BtoBビジネスにおけるマーケティング戦略の重要性について解説します。具体的な戦略の立て方や成功するためのポイントもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
BtoBマーケティングとは
「BtoBマーケティング」とは企業同士が取引をスムーズに進めるためのマーケティング活動で、「Business to Business(ビジネス トゥ ビジネス)」の略称です。将来顧客となりうる見込み客(リード)の獲得から取引成立、顧客の育成などを含めた一連の取り組みを指します。
個人消費者との取引が「Business to Customer(BtoC/ビジネス トゥ カスタマー)」であるのに対し、BtoBは企業が顧客です。
BtoBマーケティングはなぜ必要?
これまでの企業間取引では、「昔からの付き合い」といったワードがあるように、新規顧客よりも既存顧客との関係性を重視する傾向が強かったという背景があります。そのため、企業のマーケティングは営業職の付属的な業務という認識でした。
しかし昨今、グローバル化やITの普及により、企業(顧客)の購買プロセスに変化が起きています。企業の担当者たちも検索エンジンやSNSなどで情報収集するのが当たり前という時代になり、BtoBビジネスの現場でもマーケティング施策からしっかりと実践する必要性が高まってきているのが現状です。
そうした流れの中で、BtoBマーケティングに対する注目度や重要度が高まり、「マーケティング機能を持った営業部門」や「マーケティング部門の新設」といった新しい動きが起きています。
BtoBマーケティング戦略に必須の8サイクル
BtoBマーケティングにおいて大切となる考え方は、顧客のニーズにそった商品やサービスの開発と商品やサービスの認知から購買、顧客との関係性の構築です。
ここでは、BtoBマーケティング戦略に必要な8つのポイントとサイクルを紹介します。
顧客ニーズの理解
「顧客ニーズ」とは、商品やサービスを購入する際の必要性や目的です。商品とは必ずしも「モノやコト」とは限りません。「ドリルを売るには穴を売れ」という有名な言葉があるように、顧客が本当に必要としているものを把握する必要があります。
売れる商品の開発
顧客が求めているものを理解したら、ニーズに沿った商品を開発します。自社が売り出したい商品を開発するのではなく、あくまで顧客が必要としている商品を開発することが重要です。
既存製品・サービスに付加価値をつける
全く新しいモノやサービスをいちから開発するのは非常に稀です。ほとんどは、既存製品やサービスに新しい付加価値をつけ、独自のアプローチで市場に参入するケースがほとんどです。
見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
「リードナーチャリング」とは、見込み客の購買意欲を刺激し、実際に購入へと導くための活動です。マーケティングでは「顧客の育成」といった言葉を使う場合もあります。
案件化・商談化(リードクオリフィケーション)
「リードクオリフィケーション」とは、見込み客から、より購入してくれる可能性が高い顧客を見極めることです。マーケティングはもちろん、その後の営業活動などで効率化が期待できます。
受注
ある程度、購入可能性が高い顧客を絞り込んだら実際に営業(売り込み)を行います。この時点で受注できない場合は、これまでのプロセスに問題があった可能性が高いといえるでしょう。
継続(顧客維持)
継続とは、マーケティング業界では「既存顧客維持率(CRR:Customer Retention Rate))」を意味します。ビジネスは、ある期間中に獲得した顧客がどのくらい継続して取引してくれるのかが重要です。
顧客満足度調査・ニーズの把握
顧客ニーズを把握するために、満足度調査を実施します。顧客のニーズが最初に調査したものとどのくらい差があるのか、差があるとすればどこに問題があったのかなどを把握し、商品やサービスの改善を行うために重要なステップです。
「顧客ニーズの理解」や「商品開発」、「見込み客の育成」、「商談」など、それぞれ専門的な知識や経験、具体的な戦略が必要な項目ですが、ビジネスを成功させるためのマーケティングは、おおまかにこの8つのサイクルから成り立っています。
BtoBマーケティングにおける3つの重要施策と具体的な手法
ここからは、具体的なマーケティング戦略とその手法について解説します。
市場のニーズを把握し商品開発を行ってから、商談、受注に至るまでには「顧客」を獲得しなければなりません。マーケティング業界では、商品を購入してくれる可能性のある見込み客のことを「リード」と呼び、実際に購入に至るような戦略を立てます。
リードジェネレーション(見込み顧客の創出と獲得)
「リードジェネレーション」とは、見込み客(リード)を増やすことです。顧客は、自社の商品を認知してはじめて「見込み客」となり、より商品やサービスに興味・関心を持ってもらうよう働きかける必要があります。
マーケティング戦略では、顧客とより多くの接点を持つきっかけづくりが大切です。「コンテンツマーケティング」や「広告」、「展示会」などアプローチの方法はさまざまです。マス広告や直接営業も、昔からある手法といえるでしょう。
リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
「リードナーチャリング」とは、検討段階で購買意識が低い見込み客を、最終的に自社商品を購入してくれる顧客まで育成するための戦略・活動です。
リードジェネレーションで創出・獲得した見込み客のうち、すぐに購入まで決めてくれるのはどのくらいの割合でしょうか。せっかく費用や時間をかけて開催した展示会やイベント、広告を見て興味を持ってくれた顧客に対し、なにもフォローせず放置していると、大半はそのまま忘れてしまい、そのまま興味を失ってしまいます。
購入まで至ってもらうために、メールマガジンやSNSで情報を発信したり、オンラインセミナーなどで理解度を深めてもらったりといった施策を行うことで、受注率をアップさせていく働きかけが必要です。
リードクオリフィケーション(見込み顧客の抽出・選定)
「リードクオリフィケーション」とは、リードジェネレーションやリードナーチャリングで獲得した見込み客から、「すぐに購入してくれる顧客(ホットリード)」を抽出し、選別していく作業です。
選別したホットリードを営業担当と共有することで、高確率な営業活動を展開できるようになります。
これまでに獲得した見込み客を興味や関心度といった特定の条件で分ける「セグメント」、購入に至るまでの行動を想定した「シナリオ」、それらを数値化して整理する「スコアリング」といった手法を活用して選別していきます。
BtoBマーケティング戦略の立て方【4TEP】
マーケティングには「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」といった戦略が必要です。市場に上手く参入したり、競合との差別化を図り、自社商品の購入まで至ってもらうためにはどんな戦略が必要なのでしょうか。
ここでは、そんな「BtoBマーケティング戦略の立て方」を4つのステップに沿って解説します。
マーケティングの目的(KGI)を明確にする
最初のステップは、「マーケティングの目的(KGI)を明確にする」です。マーケティングの目的は、自社が解決したい「世の中や顧客が抱える課題」や社会に貢献するための「ミッション」などをもとに決定していきます。
課題やミッションなどはふんわりとしたものかもしれませんが、マーケティングに落とし込むことで解像度が上がり、より具体的な目的や目標が明確になります。
明確なゴールを決めることで、「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」がはっきりとしてきます。
ターゲットやポジショニングを定める
「マーケティングの目的」が明確に定まったら、つぎは自社が狙うべきターゲットや自社の立ち位置(ポジショニング)を見定めていく作業に移ります。
市場のなかで自社がどんなポジションで立ち回っていくかを決めるためには、ターゲットを明確にしなければなりません。そしてターゲットを定めるためには、「市場調査」と「市場細分化(セグメンテーション)」が必要です。
具体的な訴求方針や施策内容などを策定する
市場におけるターゲットや自社のポジションニングを明確化したら、具体的な訴求方針や施策内容の策定に移りましょう。明確化したターゲットやポジションによって、アプローチの方法は変わってきます。
例えば「〇〇業界の」「年商が億単位規模の企業に対し」「高品質・高価格路線の商品を提供する」がゴールだった場合は、どのような施策が最適でしょうか。
高価格帯の商品を必要とする企業担当者がよく活用するメディアはウェブかもしれませんし、マス広告よりもインフルエンサーを活用したほうが、より効果的かもしれません。そういった点を明確にして施策内容を考えていきましょう。
中間数値目標(KPI)を決定する
施策内容が定まってきたら、KGI(マーケティングの目的)を達成するための具体的な数値目標(KPI)を決定していきましょう。
KPIは、これから実施する施策が正しいものかを見極めるための重要な指標になります。そのため、実施する施策ごとにKPIを決定する必要があります。また、「なぜ、その施策を行うのか」という振り返りにも役に立ちます。
BtoBマーケティング成功のためのポイント3つ
ここからは、マーケティングの成功率を上げるためにおさえておきたいポイントを3つ紹介します。
現状を分析し課題を理解する
マーケティング戦略がまとまり、無事にプロジェクトが進んでいるように見えても、なかなか思うような成果があがらないということもあります。そんなときは一度立ち止まって、現状の整理と課題の見直しを行いましょう。
例えば「自社コンテンツのアクセス数がなかなか上がらない」という問題があった場合、解決すべき課題が見えていなければ、修正することができません。間違った点を課題だと思い込んでしまい、そのまま戦略を立ててしまうのが最も危険です。
現状を正しく分析し、解決すべき課題を理解することが大切です。
関連部署と連携をとる
マーケティングを成功するためには、さまざまなフェーズにおける関連部署の協力が必要です。
極端にいってしまえば、マーケティングはマーケティングだけでは存在できません。市場ニーズの把握や商品開発、営業、調査といった一連の企業活動において「目的を達成するため」の手段です。
課題から導き出された施策の精度や、受注の決定打となる商品の魅力などを十分に引き出すために、関連部署との協力体制を心がけましょう。
達成度などの効果測定を行う
3つ目は、「達成度などを振り返り、効果測定を定期的に実施する」です。
例えば、集客のためにインフルエンサーを活用した広告を出したとしましょう。自社サイトのアクセス数や問い合わせ数が急増し効果があったように見えるかもしれませんが、売上にはつながらないかもしれません。
「なぜ売上には至らなかったのか」を検証する作業を怠ってしまっては、これまで策定したマーケティング戦略もすべて意味がなくなってしまいます。
「目標がどのくらい達成できたのか?」を定期的に振り返り、効果測定を行うことで、目的からブレずにプロジェクトを成功に導くことが可能となります。
BtoBマーケティングは戦略が重要
BtoBマーケティングの必要性や具体的な戦略について解説しました。BtoBビジネスはBtoCにくらべ、成約に至るまでの時間が長く、より長期的な戦略が必要です。市場や自社が置かれているポジションをしっかりと把握し、何度も修正を重ねながら進めることが大切です。